手摺試験体5タイプによる騒音試験結果


 
 
  • 目的
    本試験の目的は、依頼者製の手摺に風を当て、受風時における手摺周辺での騒音の特性を把握することにあった。
  • 試験体
    試験体は、アルミニウム合金製手摺(商品名:スカイトップ)で断面形状の異なる5 体(試験体A〜E)である。
  • 試験方法
    試験は当試験所のエッフェル型吹出式境界層風洞を用いて行った。
    まず、試験体を風向角が0°,10°,20°,30°,40°,50°,60°,70°および80°となるように風洞の吹出口に設置し、風速4m/s から2m/s 毎に18m/sまでの一様流(乱れのない一様な気流)を当てた。そして、試験体の中心から斜め下1m の位置にウレタン製風防付きのマイクロホンを試験体に向けて設置し、中心周波数50〜5000Hz のl/3 オクターブバンド毎に受風時の音圧レベル(Leq10sec,周波数補正回路Flat)を測定した。
    なお、風洞装置による騒音が大きいため、試験体を設置せずに送風機の回転数毎の音圧レベル(以下、 暗騒音と呼ぶ)を予め測定し、暗騒音に比べて受風時の音圧レベルに5dB 以上の上昇が見られる場合には、 聴感でも騒音の発生状況を確認しながら測定を行った。
  • 試験年月日
    平成19 年8 月29〜31 日(実験室温湿度:27〜29℃,71〜86%RH)
  • 試験結果
    各風速条件における手摺周辺での受風時の音圧レベルおよび音圧レベルと暗騒音との差を表2.1.1〜6.8.2 に示す。
  • 考察
    表2.1.l〜6.8.2 の結果をもとに、顕著な騒音発生の有無について考察する。
    一般的に手摺の受風時に発生する騒音には、手摺背後に発生するカルマン渦の周波数が手摺の固有振動数と一致することにより発生する振動音、2オクターブ以上の広帯域な周波数特性を持つ手摺自体のガタツキ音と、1000Hz 帯域以上の高音域に鋭いピークを持つ笛鳴り音がある。これらを考慮しながら発生騒音の特徴について検討を加えた。
・試験体A

 振動音の有無を調べると、風速6,10〜14,18m/s;風向角0°において50〜100Hz 帯域で暗騒音に比べて最大約8dBの上昇が見られ、聴感による検知も含めて、振動音の発生が認められた。
 そのほか、音圧レベルに若千の上昇が認められる条件はあったものの、聴感による発生音の検知はされず、ガタツキ音および笛鳴り音については発生していないと判断した。
 試験体Aにおける騒音発生の有無を表1.1に示す。

表1.1試験体Aにおける騒音発生の有無

表1.2試験体Bにおける騒音発生の有無

註)表中の網掛け部分は、騒音の発生が認められたもの、「−」は発生が認められなかったものを示す。

・試験体B

 振動音の有無を調べると、風速8〜10,16〜18m/s;風向角0°,風速10m/s;風向角20°において63〜500Hz 帯域で暗騒音に比べて最大約12dB の上昇が見られ、聴感による検知も含めて、振動音の発生が認められた。
 ガタツキ音の有無を調べると、風速10m/s;風向角0。において3150Hz 以上の帯域で暗騒音に比べて最大約11dBの上昇が見られ、聴感による検知も含めて、ガタツキ音の発生が認められた。
 そのほか、風速10m/s;風向角70〜80°,風速12〜18m/s;風向角70°の条件など、音圧レベルに上昇が認められる条件はあったものの、聴感による発生音の検知はされず、笛鳴り音については発生していないと判断した。
 試験体Bにおける騒音発生の有無を表1.2 に示す。

表1.2試験体Bにおける騒音発生の有無

表1.2試験体Bにおける騒音発生の有無

註)表中の網掛け部分は、騒音の発生が認められたもの、「−」は発生が認められなかったものを示す。

・試験体C

 振動音の有無を調べると、風速16m/s;風向角0°〜10°において100Hz 帯域で暗騒音に比べて最大約7dB の上昇が見られ、聴感による検知も含めて、振動音の発生が認められた。
 そのほか、風速18m/s;風向角60°,風速10〜18m/s;風向角70°の条件など、音圧レベルに若干の上昇が認められる条件はあったものの、聴感による発生音の検知はされず、ガタツキ音および笛鳴り音については発生していないと判断した。
 試験体C における騒音発生の有無を表1.3に示す。

表1.3試験体Cにおける騒音発生の有無

表1.3試験体Cにおける騒音発生の有無

註)表中の網掛け部分は、騒音の発生が認められたもの、「−」は発生が認められなかったものを示す。

・試験体D

 振動音の有無を調べると、風速14m/s;風向角40°〜50°において125Hz 帯域で暗騒音に比べて最大約8dBの上昇が見られ、聴感による検知も含めて、振動音の発生が認められた。
 そのほか、風速16m/s;風向角0°,風速12〜18m/s;風向角70°の条件など、音圧レベルに若干の上昇が認められる条件はあったものの、聴感による発生音の検知はされず、ガタツキ音および笛鳴り音については発生していないと判断した。
 試験体Dにおける騒音発生の有無を表1.4に示す。

表1.4試験体Dにおける騒音発生の有無

表1.4試験体Cにおける騒音発生の有無

註)表中の網掛け部分は、騒音の発生が認められたもの、「−」は発生が認められなかったものを示す。

・試験体E

 風速10〜18m/s;風向角40°,風速12〜18m/s;風向角50°,風速10〜18m/s;風向角70°の条件など、音圧レベルに若千の上昇が認められる条件はあったものの、聴感による発生音の検知はされず、振動音、ガタツキ音、笛鳴り音のいずれについても発生していないと判断した。
 試験体E における騒音発生の有無を表1.5 に示す。

表1.5試験体Eにおける騒音発生の有無

表1.5試験体Cにおける騒音発生の有無

註)表中の網掛け部分は、騒音の発生が認められたもの、「−」は発生が認められなかったものを示す。

なお、試験体A〜E において、聴感による発生音の検知がされなかったものの、音圧レベルに若千のレ ベル上昇があったのは、試験体を設置することにより風の流れに変化が生じ、マイクロホンへの風当たり が強くなったためと考えられる。

以上